日本経済への処方箋
円高を享受するための制度設計
日本が長期衰退の道に陥らないための処方箋を書く。
輸出型モデルとして日本の産業界を引っ張ってきた
製造業が円高と米国の消費不振で苦境にあえいでいる。
対米輸出、中国経由の対米輸出が大幅に減少し、
日本の産業の牽引役が大打撃を受けた。
追い討ちを掛けたのが円高だ。
日本は恒常的経常黒字国(貿易黒字+投資黒字)であったにもかかわらず、
産業界→政界→日銀の「リーダー不在の短期利益追求型政策」
によって、輸出モデルの過保護のために低金利による円安誘導を続けた。
その結果、本来の円の実力を加味しない不均衡な円安水準が続き、
結果的にサブプライムの信用収縮を機に円への大逆流が引き起こされた。
日本の製造業は生産性の面から見ると
漸増しているので、確かに優良産業であった。
しかしそれは、労働固定費を海外(中国を始めとした東南アジア)諸国に
移転させたための結果である。
企業は1997年くらいから大挙して中国に工場を建設していった。
そこには10億人のマーケットの前に並ぶ
「10億人の単純作業労働者」によって魅力ある「世界の工場」となった。
これが日本から「単純労働」という低生産性要素を分離する一方で
「頭脳労働」という高付加価値要素を国内に残すという
一挙両得作戦にでたのであった。
結果は言わずもがな。米国の過剰消費が低コストの中国生産品と
高性能の日本製品をもって製造業の生産性を一気に高める結果となった。
翻って、日本のサービス業の低迷は悲惨な状況である。
日本のサービス業における全要素生産性
(TFP=Total Factor Productivity)は近年顕著な伸びを示していない。
製造業が海外に低付加価値の「切り離し」を出来たのに対して
サービス業は「日本国内で」付加価値の産出を行わなければならないため、
「低付加価値の切り離し」ができない。
他方労働派遣については規制が厳しくなる一方で、
今後も国内の労働力に依存した付加価値産出体制は
大きな変貌を遂げられそうに無い。
麻生首相も言うように、内需拡大を本腰を入れるためには
いくつかの面で制度設計を見直す必要がある。
何より大きな処方箋は「移民の受け入れ」である。
移民は低コストの労働力確保のために必要な人材である。
ましてやこの円高では、日本円で賃金をもらうことの優位性は圧倒的である。
円貨で稼いだ賃金を本国に送金する際には「円売り」を行うわけだから、
本質的には円の実力レートに均衡することになる。
また、外国人を働かせることには副次的なメリットが生じる。
外国人は日本人のようにハイコンテクストな民族ではない。
日本人主体でやっていた業務は全て職務記述書として
内容を明記することが重要になる。
これらは職種と賃金を客観的に表すのに役立ち、
人材の能力と賃金を適切な比例関係にする好機となる。
日本人には「おれは部長が出来る」という
スーパー勘違いの「ノンワーキングリッチ」が多いが、
これらは本質的には、「部長の仕事」がこれまで定義されていなかったという
ことに起因している。
イケイケドンドンの高度成長期は、官僚型で、
命令系統に従うオペレーション重視の人材と、
なでもやる総務型人材が重宝されてきた。
ノンワーキングリッチは高度成長時代の「負の遺産」である。
負の側面ばかり見ずに移民を受け入れろ
移民の受け入れを通じて、
・低付加価値の外部ソーシング
・ローコンテクストを前提とした付加価値生産体制
・ノンワーキングリッチの排除
・魅力ある労働市場
を構築することがこれからの日本のサバイバル術である。
日本の高度なサービスが企業の国際競争力を高め、
ローコンテクストを前提とした付加価値生産体制が
構築できれば、サービス業の海外展開も加速する。
同時に日本は移民増加による住宅市場の安定化や
国内サービスの多様化を通じて少子高齢化の弊害を
少しずつでも緩和しながら成長を享受できるのである。
他方、日本政府としては
移民増加による治安懸念への対応と
大量解雇されるであろう、低付加価値の日本人を
再教育するセイフティネットの構築が求められる。
再教育は一朝一夕には効果が出ないが、
長期的に見て日本の競争力を向上させるには
最も費用対効果の大きいものである。
