日本経済への処方箋

Posted on 2009-2-17 by admin under Asia, Economics, International, Japan, Politics. Tags: , , , ,

円高を享受するための制度設計

日本が長期衰退の道に陥らないための処方箋を書く。

輸出型モデルとして日本の産業界を引っ張ってきた
製造業が円高と米国の消費不振で苦境にあえいでいる。

対米輸出、中国経由の対米輸出が大幅に減少し、
日本の産業の牽引役が大打撃を受けた。

追い討ちを掛けたのが円高だ。
日本は恒常的経常黒字国(貿易黒字+投資黒字)であったにもかかわらず、
産業界→政界→日銀の「リーダー不在の短期利益追求型政策」
によって、輸出モデルの過保護のために低金利による円安誘導を続けた。

その結果、本来の円の実力を加味しない不均衡な円安水準が続き、
結果的にサブプライムの信用収縮を機に円への大逆流が引き起こされた。

日本の製造業は生産性の面から見ると
漸増しているので、確かに優良産業であった。

しかしそれは、労働固定費を海外(中国を始めとした東南アジア)諸国に
移転させたための結果である。

企業は1997年くらいから大挙して中国に工場を建設していった。
そこには10億人のマーケットの前に並ぶ
「10億人の単純作業労働者」によって魅力ある「世界の工場」となった。

これが日本から「単純労働」という低生産性要素を分離する一方で
「頭脳労働」という高付加価値要素を国内に残すという
一挙両得作戦にでたのであった。

結果は言わずもがな。米国の過剰消費が低コストの中国生産品と
高性能の日本製品をもって製造業の生産性を一気に高める結果となった。

翻って、日本のサービス業の低迷は悲惨な状況である。

日本のサービス業における全要素生産性
(TFP=Total Factor Productivity)は近年顕著な伸びを示していない。

製造業が海外に低付加価値の「切り離し」を出来たのに対して
サービス業は「日本国内で」付加価値の産出を行わなければならないため、
「低付加価値の切り離し」ができない。

他方労働派遣については規制が厳しくなる一方で、
今後も国内の労働力に依存した付加価値産出体制は
大きな変貌を遂げられそうに無い。

麻生首相も言うように、内需拡大を本腰を入れるためには
いくつかの面で制度設計を見直す必要がある。

何より大きな処方箋は「移民の受け入れ」である。
移民は低コストの労働力確保のために必要な人材である。

ましてやこの円高では、日本円で賃金をもらうことの優位性は圧倒的である。
円貨で稼いだ賃金を本国に送金する際には「円売り」を行うわけだから、
本質的には円の実力レートに均衡することになる。

また、外国人を働かせることには副次的なメリットが生じる。
外国人は日本人のようにハイコンテクストな民族ではない。

日本人主体でやっていた業務は全て職務記述書として
内容を明記することが重要になる。

これらは職種と賃金を客観的に表すのに役立ち、
人材の能力と賃金を適切な比例関係にする好機となる。

日本人には「おれは部長が出来る」という
スーパー勘違いの「ノンワーキングリッチ」が多いが、
これらは本質的には、「部長の仕事」がこれまで定義されていなかったという
ことに起因している。

イケイケドンドンの高度成長期は、官僚型で、
命令系統に従うオペレーション重視の人材と、
なでもやる総務型人材が重宝されてきた。
ノンワーキングリッチは高度成長時代の「負の遺産」である。

負の側面ばかり見ずに移民を受け入れろ

移民の受け入れを通じて、
・低付加価値の外部ソーシング
・ローコンテクストを前提とした付加価値生産体制
・ノンワーキングリッチの排除
・魅力ある労働市場
を構築することがこれからの日本のサバイバル術である。

日本の高度なサービスが企業の国際競争力を高め、
ローコンテクストを前提とした付加価値生産体制が
構築できれば、サービス業の海外展開も加速する。

同時に日本は移民増加による住宅市場の安定化や
国内サービスの多様化を通じて少子高齢化の弊害を
少しずつでも緩和しながら成長を享受できるのである。

他方、日本政府としては
移民増加による治安懸念への対応と
大量解雇されるであろう、低付加価値の日本人を
再教育するセイフティネットの構築が求められる。

再教育は一朝一夕には効果が出ないが、
長期的に見て日本の競争力を向上させるには
最も費用対効果の大きいものである。

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シームレスな労働条件こそ競争力の源泉

Posted on 2009-1-11 by admin under Asia, Economics, International. Tags: , , ,

 

昨今、派遣切りの問題がクローズアップされている。

民主党などは製造業の派遣労働を禁止すべきだとか、
解雇できないようにしろなどと、民意優先の愚作を提案している。

本質的な問題は派遣の解雇権ではない。

最も重要な改革テーマは、正規社員の雇用条件である。

正規社員は給料をボーナスで多少減らされるだけで、
それ以上基本給が大幅に下がったり、
あるいは解雇にいたるケースはまれである。

しかし派遣社員など非正規社員は、給与の減少、解雇などが平然と行われる。

減給や解雇は労働需給の変化に対応するための重要なツールであるが、
これを画一的に禁止してしまうと、硬直化した労働環境が形成され、
企業側は雇用により慎重となってしまう。

また、派遣社員が受け持っている単純労働作業は
長期的に見ればITと中国に取って代わられるのは時間の問題である。

日本が国際競争力を発揮し、労働力を最大限活用するのであれば、
正規社員にも現在の派遣社員同等に、解雇権を認めるべきである。

正規社員と派遣社員が同等の労働を行いながら
待遇に一目瞭然の差があることが、
日本の労働環境を硬直化させ、競争力を長期的に奪ってしまう。

日本の一人当たり平均GDPは4万ドル前後だが、
韓国は2万ドル前後、中国は一桁少ない、4000ドル前後だ。

中国の単純労働ワーカーの月給は200ドル弱である。
ベトナムもしかり、ようやく100ドルに到達したくらいである。

東アジアという地理的環境と、近年のグローバル化、自由貿易化、IT化は
日本の長期的な単純労働の賃金水準が中国や韓国、ベトナムと同水準になることを
示唆している。

日本の平均GDPは2.5万ドルくらいまで落ちるだろう。

その間、非正規社員にのみ解雇権を認めているようであれば、
日本の労働環境は断絶し、ワーキングプアがただのプアになり、
格差はもっと開いてしまう。

いまこそシームレスな労働環境を構築し、
来るべき東アジアの経済圏における競争力をつける絶好のチャンスなのである。

 

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