理論から実践へ マーケティングの基本と考え方|シンプルな絶対基準の追求
理論めいたことばかり並べても現実味に乏しいマーケティングと思われるなので、さまざまな業種の中小企業クラスのマーケティングに当てはめてこの考え方を適用してみる。
重ねて言うが、重要なのは想定する顧客ターゲットを1パターンにとどめないことである。一般のマーケティングでは顧客像を絞り込みそこを照準として営業活動を集中することが言われているが、現実にそのように顧客増を絞りすぎることはリスクを大きくするだけである。また、つたない発想でマーケティングを行えば既存の業界路線の踏襲にしかならならないことが関の山だ。それでは自社だけが独走し、業界地図を塗り替えるような戦略は生み出せない。そうならないためにも複数の角度から自分の事業を見直し、複数の顧客層を想定し、複数の戦略とたてて事業に望むことはGoing-concernの観点からも重要なことである。
本稿では自動車修理、居酒屋、花や、床屋、携帯ショップ、ファーストフード、喫茶店、観光地の土産製造業、民宿、といった業種を例に挙げながらマーケティングの考え方を実践していく。これらは普通、5~30人程度の規模の中小企業であると考えられるが、もちろんそれ以上の企業であれば同じ話しが適用できる。同時にこれらの企業は一般的に地域に根ざし、差別化や大きな規模になることが難しいとされる業態である。これらが十分に利益を確保し生き残れるとすれば日本の中小企業は安定的な地位を確保し、労働市場のボラティリティを確保して経済の拡大に寄与することが出来る。
さらに士業と呼ばれる、専門性の高い個人事業や、その他SOHOでやっている個人事業主のマーケティングについては後半で紹介する。ここでは、私も属している中小企業診断士のほかに、社労士(社会保険労務士)、行政書士、経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーなどといった、これと言った独占業務が無いような類の士業についてマーケティングを行ってみる。
これまでの基本に基づいて、様々な業種、ジャンルのマーケティングを行っていきたい。読者の中にもこの業種に携わる方々は多いことだろう。無論マーケティングの答えは業種を絞ったところで一つではない。あくまでも頭の体操である。幅広い状況分析から的確な複数の仮説を出すだけの話である。仮説に基づいて行動し、あっていればさらに改善し、間違っていれば修正をしていくのである。そこに必要なのは突飛な発想ではなく一般消費者の常識である。一般消費者の常識を持っていれば自ずから誤った道には入らない。どんなヒット商品もまぐれで生み出されてはいけない。世の中ではヒット商品のみにスポットライトが当り、並外れた頭脳の持ち主が奇跡のように生み出した実例が書いてある。しかし現実には奇跡だけで優れた成果を出した企業は次に続かない。ヒットでも3本打てば得点が入る。そういうマーケティングを行える企業になって欲しい。経営者、あるいは生みの親の過度な思い込みと、修正されない仮説によって事業が立ち直れないほどにダメージを受けてしまうことも多い。そうならないためにも普遍的でシンプルな考え方を習得しておくことは重要である。いつまでも自分、自社の絶対基準を持っていればおのずと正しい道は開ける。
