潮流の変化  ボリューム型資本主義から、知識資本主義へ

Posted on 2008-10-25 by admin under [00] 序章.

大きな企業を経営しているあるいは携わっている人にとってこのホームページ制作で起業した人物の話はどう写っただろうか?自分の会社の規模にとっては関係のない話、あるいは巷ではそういう人も増えているという感想をお持ちになったくらいであろうか。この事例は決してそういう単純な事例を紹介しただけではない。我々は今、世紀の産業大変革期にいる。これまで数百年に渡って資本主義社会の産業の基本は設備集約型や労働集約型であった。それらの産業実現のためには大規模な資本が必要になり、そこには株式公開という資本調達市場や銀行という間接金融の提供市場が必要となる。しかしいまや我々の産業の多くは知識集約型と先述の2形態が断絶する環境に置かれている。2008年に大ヒットしたアップルコンピュータのiPhoneや、任天堂のWiiはどちらも自社工場を持たない企業によって作り出された。iPhoneもWiiも製造しているのはアップルでも任天堂でもなく、EMS(電子機器製造専業メーカー)の台湾Honhaiエレクトロニクスである。知識と労働が企業を分断し、国を隔てて、一つの商品として実現しているのだ。高度に発達した分業体制は製造業にとどまらない。コールセンターなどの産業は今やインドや中国で大規模に展開されている。日本語を話せる人々が多い中国の大連では、日本企業のコールセンターが大規模に開設され、日本のユーザーが電話した内容は大連のオペレーターが受信して対応している。Dellのコールセンターはインドのバンガロールにある。ビジネスにおける垂直統合は、高度な地球規模の水平分業になっている。これを可能にしているモノはなんだろうか?そ
れはICT(情報通信技術)を置いて他にない。インターネットの爆発的な普及はこういったグローバル水平分業を推し進めている。

そしてさらに知識資本の労働にもさらなる革命第二波として津波のように押し寄せている。それはあなたのデスクにあるパソコンの「向こう側」で起こっているのだ。知識資本労働に必要不可欠な「ソフトウェアの無料化」が大爆発して蔓延しているのである。パソコンを導入している企業ならほぼ導入しているであろう、マイクロソフトのオフィスは、米サンマイクロシステムズや米IBMが推進するオープンオフィスというソフトウェアによって、90%以上の代替性を確保している。マイクロソフトのオフィスを導入するには1台のPCにつき2万円以上の経費が必要だが、オープンオフィスはそのホームページからダウンロードするだけで無料で利用できる。もちろんマイクロソフトのWord、Excel、PowerPointなどは当然開けるし、編集した内容をマイクロソフトの形式で保存することもできる。一般的な利用方法において、95%以上のユーザーはオープンオフィスで困ることはないであろう。マイクロソフトのオフィス関連売上高は1兆円を超えるが、マイクロソフトはいまやそれを100%失う危機にあるといえる。マイクロソフトの幹部はオープンオフィスの存在が知れ渡るのを少しでも遅れることをただ祈るのみだ。

マイクロソフトの幹部が恐れるのはそれだけではない。Linuxの台頭である。オープンソースのOSであるLinuxは当時フィンランドの学生であったリーナストラバース氏を中心としたボランティアで作られた。それが今や世界のウェブサーバーの99%で標準ソフトとして利用されている。Dellは一般の人々が使うネットトップという5万円の格安パソコンの目玉としてOSにLinuxをインストールしたモデルを発売した。OSが低コストなので、販売価格を徹底的に引き下げられる。世界中のウェブサーバーを構築する際のサーバーソフトApache(アパッチ)というソフトも無料である。さらにウェブページを構築するためのオープンソースソフトが大量に無料でインターネット上にはあふれている。多少の知識があればブログシステムやポータルサイトが10分ほどで構築できる。MixiのようなSNS(ソーシャルネットワークサービス)も同様にオープンソースソフトで構築することができる。このようなオープンソフトを活用して企業向けにシステムを開発する起業家がいま爆発的に増えている。

ブラウザーやメールソフトは実質無料になっているが、マイクロソフト以外にも、Firefox、Opera、など優秀なソフトが台頭している。マイクロソフトの牙城が崩されることを書いたのは私がマイクロソフトを好きだとか、嫌いだとかそういう次元の話ではない。

他にもある。AdobeのFlashとほぼ同等の機能でFlash動画を作れるソフトが、Suzuka、Palaflaといったソフトでこれらも無料で公開されている。画像編集ソフトではPhotoshopが8万円もする高価なソフトであることは知られているが、こちらも無料でPixia、GIMPといったソフトを活用すればPhotoshopの機能の5割くらいのことができる

書き忘れたが、オフィスソフトの代替品には他にもKingsoftなどの中国製ソフトもある。こちらは有料ではあるが、費用はざっとマイクロソフトの6分の1である。常にディスプレイ上でマイクロソフトのロゴを眺めていないと落ち着かないMS依存症の人がもしいるならば、あるいはお金が十分に余っているならば、6倍高い値段で旧世紀のソフトを買うことをオススメする。

繰返しになるが、私はマイクロソフトの株を空売りしているわけではない。これらは象徴的な出来事であるということが言いたいのだ。これまでの産業の大潮流をみてきて、一般の人々に何か影響を及ぼす事実があるとき、それは一つの時代の変化を表すものではなかっただろうか?50年前の日本で、学生がアルバイトで稼いだお金で飛行機に乗って海外旅行をするなんて誰が想像したであろうか。ショルダーバッグほどの大きさの携帯電話が登場した1990年に、その15年後には胸ポケットに入る100gの携帯に500万画素のカメラとウォークマンが入っているということを誰が想像したであろうか。

社会を大きく変革する事実は、小さな事象をつぶさに見れば発見できる。先に書いたホームページ制作起業家の例や、無料ソフトの台頭は我々に何を示唆してくれるのであろうか?ぜひ考えてみて欲しい。これは巨大資本・生産設備・単純労働といったボリューム集約産業の産業形態から、軽量でスマートな知識労働集約型の産業形態へと大きく変換する土台が世界規模で推し進められ、既に整い始めたことを意味している。

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経営におけるリスクボリューム

Posted on 2008-10-25 by admin under [00] 序章.

経営にリスクはつき物である。ベンチャーという語源が冒険と近いのもそういう見かたが世間にあったからである。リスクの無いところにリターンはない。経済の基本は分業の利益である。専門家になることで専門家たるメリットを出せ、それが個人の活動からかけ離れた付加価値を生むのである。トヨタは普及型の車(ヴィッツなど)を100万円で販売しているが、個人が自動車の部品を発注しトヨタと同じように組み立てていても100万円などという低価格ではとても組み立てられない。トヨタは世界で年間900万台も生産するから量産効果が現われ、コストを低減できる。しかしそこには年間900万台も販売しなければいけないという大きなリスクが伴う。万が一にもありえないことだが、900万台作ったのに1台も売れなければリスクを犯して生産したことが自社を倒産に追い込む危険もはらんでいる。分業の利益とは言うなれば数を集めることであり、それがリスクと等しくなり、リターンとの正の相関をもつ。つまり経済活動の原則は専門性にあるのであって、総合性にあるのではない。しかし、かつての松下電器産業、三洋などといった総合電機メーカーに見られるような一方的な拡大路線はその後の社会の低迷時期に莫大な赤字を生み出す事業となって自社の存亡を揺るがすのである。ここにも常に経営者は「自社の強みは何か」ということと、社会環境の変化を先取りして「自社の強みをどう変化させていくべきか」ということを考えていなければいけない。

ボリュームがリスクと等しいと書いたが、最近のビジネスでは実際には少しニュアンスが違っている。IT化の進展や知識労働による付加価値の拡大によって、ボリュームがリスクかというとそうではない場合もある。利益は売上-費用であることはご承知のとおり。その費用の中には変動費と固定費という分け方がある。変動費は生産量に比例して増えていく要素であり、自動車1台につき1つ使う部品などは変動費そのものである。一方で固定費は生産量に依存しない費用で、生産設備や人件費である。現実には純然たる固定費は知識資本以外に無く、生産設備も生産量が倍になれば倍必要になることが一般的である。よって「変動固定費」とでも表現するほうが適当であろうか。

旧来の資本集約型の産業では、固定資産となる生産設備を莫大な投資額で購入し、それを減価償却で回収するというビジネスモデルである。しかしこの50年間で世界の付加価値の創出構造は変化し、多くはサービスなどの知識労働が占めるようになった。また10年来のIT革命により、単純作業の計算コストが劇的に安くなり、限界計算費用が実質ゼロ円となった。これによって世界中にタダで電話できるSkypeのようなシステムや、日本中の中からその商品を最も高く買ってくれる人を探し出すことがほぼ無料でできるようになった。これらIT革命と知識労働者の勃興は産業構造のみならず、起業の方向性に大きな影響を与えたのである。

いまやパソコン1台と電話1台で起業する人は決してマイノリティではない。パソコンを使えば世界中の人々とメールが無料で出来、インターネットを使えば自分の音声や動画を配信することもできる。ホームページの制作を個人で請け負っている私の友人は、まさにパソコンと電話のみで仕事をしている。画像処理ソフトを含めても初期投資はざっと20万円だろうか。固定費が極小ならば変動費はゼロである。パソコン上で制作するファイルはいくら作ってもコストは掛からない。自分の人件費さえ出ればあとはお客を増やすだけである。

コンサルタントも増えた。経営コンサルタントといっても工場現場改善コンサルタントもあれば、省エネコンサルタント、家賃交渉コンサルタントもいる。士気向上コンサルタントもいれば、賃金体系構築コンサルタント、営業マン育成コンサルタント、果たして「コンサルタントの選び方コンサルタント」まで存在する。彼らは全て電話一本、パソコン1台で起業ができてしまう。目に見える固定資本はパソコンと電話だけで、残りの固定資本は脳内に格納されている。この脳内資本は腐ることもなく、顧客を獲得すればするほど容量を増し洗練されていくものである。

全ては分業、低資本、集める、専門家、ノウハウ というキーワードを全うしていれば経営における破綻リスクは少なく永続する企業への順調なスタートを切ることが出来る。

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