このような潮流の変化を目の当たりにした我々の企業はその進路をどのように取ったらいいのだろうか?果たして知識資本主義に対応した企業の形態とはどのようなものなのか。我々の周りにある代表的な企業の強みと弱みを再考してみよう。日本で最も時価総額の大きく、世界的競争力の強い企業はトヨタである。時価総額20兆円。年間の売上高20兆円、営業利益は2兆円をたたき出す。自己資本比率は50%前後、規模の違いは別としてもトヨタの形態は良くも悪くも日本の基幹産業を代表した形である。ちょっとした独自商品をもつ企業であれば、営業利益率10%前後は行っているであろう。長年の利益剰余金を積み上げているのであれば自己資本比率は50%前後、現金性の預貯金も多く抱え、戦後の焼け野原から立ち上がった企業であれば旧日本軍からの払い下げでタダ同然の土地をもらい事業を始めた企業であれば場合によっては土地などの含み益も多い。そんな企業が日本には五万とあるだろう。海外の売上比率や現地生産の比率はトヨタと違えど、製造業であまり手を広げず、地道に独自路線を行く姿はトヨタにかぶるものでも有るのではなかろうか。
そんなトヨタも、自社の改革には手を焼いている。グローバルで20万人を雇用し、肥大化しすぎた組織、年間1兆円もかかる研究開発費。世界中で強まるCO2や有害物質規制、各種の環境対応。生産と販売のグローバル化、新興国の開拓、株主価値向上のための利益率向上などなど。三河の殿様などといわれた愛知県のローカル企業ではなく、地球市民として磐石の行動が求められている。今、トヨタが真に直面している課題とはなんだろうか?答えは一つではないし、聞く人によって答えは違うだろう。しかし、一ついえる答えは、「トヨタが知識企業とスケール企業のどちらに舵を取るのか」ということである。「知識企業」と「スケール企業」この両社は本質的には企業のバリューチェーンにおける分業体制、水平分業の考え方次第である。変動費、固定費の項目でも述べたが、企業にとって生産あるいは販売台数を1台増やす際に、やむを得ず増えてしまうものが変動費である。一方で生産あるいは販売台数を1台増やすためにも一義的には増えない、若しくはかなりの量が増えない限り増加しないものが固定費である。
自動車産業におけるバリューチェーンは、マーケティング、基礎研究、設計、試作、量産、販売、アフターサービスと繋がっていく。その各フェーズにおいてトヨタが自社で本当に持つべき必要があるのかどうかを検証していく作業が行われなければならない。究極の質問はこの3つだ。
・そのバリューは他社から借りてくることはできないか?
・他社に集約したほうが効率がいい可能性がないか?
・それは変動費要素ではないか?
多くの場合この質問に対する答えは次の2つだ。
・機密漏洩、ノウハウ流出の観点から好ましくない。
・前後のフェーズと関連するシナジーが失われる。
例えばマーケティングを外部ソースに頼れば自車のコンセプトを明確に考えられない可能性もある。研究開発を外部ソースに頼れば自社の本当に必要な研究開発を行えないリスクが生じる。生産を外部ソースに頼ればトヨタ式生産方式のノウハウを流出せずにさらに洗練できるのか。販売を外部ソースに頼れば、自社の販売戦略を正確に伝えられない恐れもある。

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