経営におけるリスクボリューム

Posted on 2008-10-25 by admin under [00] 序章.

経営にリスクはつき物である。ベンチャーという語源が冒険と近いのもそういう見かたが世間にあったからである。リスクの無いところにリターンはない。経済の基本は分業の利益である。専門家になることで専門家たるメリットを出せ、それが個人の活動からかけ離れた付加価値を生むのである。トヨタは普及型の車(ヴィッツなど)を100万円で販売しているが、個人が自動車の部品を発注しトヨタと同じように組み立てていても100万円などという低価格ではとても組み立てられない。トヨタは世界で年間900万台も生産するから量産効果が現われ、コストを低減できる。しかしそこには年間900万台も販売しなければいけないという大きなリスクが伴う。万が一にもありえないことだが、900万台作ったのに1台も売れなければリスクを犯して生産したことが自社を倒産に追い込む危険もはらんでいる。分業の利益とは言うなれば数を集めることであり、それがリスクと等しくなり、リターンとの正の相関をもつ。つまり経済活動の原則は専門性にあるのであって、総合性にあるのではない。しかし、かつての松下電器産業、三洋などといった総合電機メーカーに見られるような一方的な拡大路線はその後の社会の低迷時期に莫大な赤字を生み出す事業となって自社の存亡を揺るがすのである。ここにも常に経営者は「自社の強みは何か」ということと、社会環境の変化を先取りして「自社の強みをどう変化させていくべきか」ということを考えていなければいけない。

ボリュームがリスクと等しいと書いたが、最近のビジネスでは実際には少しニュアンスが違っている。IT化の進展や知識労働による付加価値の拡大によって、ボリュームがリスクかというとそうではない場合もある。利益は売上-費用であることはご承知のとおり。その費用の中には変動費と固定費という分け方がある。変動費は生産量に比例して増えていく要素であり、自動車1台につき1つ使う部品などは変動費そのものである。一方で固定費は生産量に依存しない費用で、生産設備や人件費である。現実には純然たる固定費は知識資本以外に無く、生産設備も生産量が倍になれば倍必要になることが一般的である。よって「変動固定費」とでも表現するほうが適当であろうか。

旧来の資本集約型の産業では、固定資産となる生産設備を莫大な投資額で購入し、それを減価償却で回収するというビジネスモデルである。しかしこの50年間で世界の付加価値の創出構造は変化し、多くはサービスなどの知識労働が占めるようになった。また10年来のIT革命により、単純作業の計算コストが劇的に安くなり、限界計算費用が実質ゼロ円となった。これによって世界中にタダで電話できるSkypeのようなシステムや、日本中の中からその商品を最も高く買ってくれる人を探し出すことがほぼ無料でできるようになった。これらIT革命と知識労働者の勃興は産業構造のみならず、起業の方向性に大きな影響を与えたのである。

いまやパソコン1台と電話1台で起業する人は決してマイノリティではない。パソコンを使えば世界中の人々とメールが無料で出来、インターネットを使えば自分の音声や動画を配信することもできる。ホームページの制作を個人で請け負っている私の友人は、まさにパソコンと電話のみで仕事をしている。画像処理ソフトを含めても初期投資はざっと20万円だろうか。固定費が極小ならば変動費はゼロである。パソコン上で制作するファイルはいくら作ってもコストは掛からない。自分の人件費さえ出ればあとはお客を増やすだけである。

コンサルタントも増えた。経営コンサルタントといっても工場現場改善コンサルタントもあれば、省エネコンサルタント、家賃交渉コンサルタントもいる。士気向上コンサルタントもいれば、賃金体系構築コンサルタント、営業マン育成コンサルタント、果たして「コンサルタントの選び方コンサルタント」まで存在する。彼らは全て電話一本、パソコン1台で起業ができてしまう。目に見える固定資本はパソコンと電話だけで、残りの固定資本は脳内に格納されている。この脳内資本は腐ることもなく、顧客を獲得すればするほど容量を増し洗練されていくものである。

全ては分業、低資本、集める、専門家、ノウハウ というキーワードを全うしていれば経営における破綻リスクは少なく永続する企業への順調なスタートを切ることが出来る。

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