大きな企業を経営しているあるいは携わっている人にとってこのホームページ制作で起業した人物の話はどう写っただろうか?自分の会社の規模にとっては関係のない話、あるいは巷ではそういう人も増えているという感想をお持ちになったくらいであろうか。この事例は決してそういう単純な事例を紹介しただけではない。我々は今、世紀の産業大変革期にいる。これまで数百年に渡って資本主義社会の産業の基本は設備集約型や労働集約型であった。それらの産業実現のためには大規模な資本が必要になり、そこには株式公開という資本調達市場や銀行という間接金融の提供市場が必要となる。しかしいまや我々の産業の多くは知識集約型と先述の2形態が断絶する環境に置かれている。2008年に大ヒットしたアップルコンピュータのiPhoneや、任天堂のWiiはどちらも自社工場を持たない企業によって作り出された。iPhoneもWiiも製造しているのはアップルでも任天堂でもなく、EMS(電子機器製造専業メーカー)の台湾Honhaiエレクトロニクスである。知識と労働が企業を分断し、国を隔てて、一つの商品として実現しているのだ。高度に発達した分業体制は製造業にとどまらない。コールセンターなどの産業は今やインドや中国で大規模に展開されている。日本語を話せる人々が多い中国の大連では、日本企業のコールセンターが大規模に開設され、日本のユーザーが電話した内容は大連のオペレーターが受信して対応している。Dellのコールセンターはインドのバンガロールにある。ビジネスにおける垂直統合は、高度な地球規模の水平分業になっている。これを可能にしているモノはなんだろうか?そ
れはICT(情報通信技術)を置いて他にない。インターネットの爆発的な普及はこういったグローバル水平分業を推し進めている。
そしてさらに知識資本の労働にもさらなる革命第二波として津波のように押し寄せている。それはあなたのデスクにあるパソコンの「向こう側」で起こっているのだ。知識資本労働に必要不可欠な「ソフトウェアの無料化」が大爆発して蔓延しているのである。パソコンを導入している企業ならほぼ導入しているであろう、マイクロソフトのオフィスは、米サンマイクロシステムズや米IBMが推進するオープンオフィスというソフトウェアによって、90%以上の代替性を確保している。マイクロソフトのオフィスを導入するには1台のPCにつき2万円以上の経費が必要だが、オープンオフィスはそのホームページからダウンロードするだけで無料で利用できる。もちろんマイクロソフトのWord、Excel、PowerPointなどは当然開けるし、編集した内容をマイクロソフトの形式で保存することもできる。一般的な利用方法において、95%以上のユーザーはオープンオフィスで困ることはないであろう。マイクロソフトのオフィス関連売上高は1兆円を超えるが、マイクロソフトはいまやそれを100%失う危機にあるといえる。マイクロソフトの幹部はオープンオフィスの存在が知れ渡るのを少しでも遅れることをただ祈るのみだ。
マイクロソフトの幹部が恐れるのはそれだけではない。Linuxの台頭である。オープンソースのOSであるLinuxは当時フィンランドの学生であったリーナストラバース氏を中心としたボランティアで作られた。それが今や世界のウェブサーバーの99%で標準ソフトとして利用されている。Dellは一般の人々が使うネットトップという5万円の格安パソコンの目玉としてOSにLinuxをインストールしたモデルを発売した。OSが低コストなので、販売価格を徹底的に引き下げられる。世界中のウェブサーバーを構築する際のサーバーソフトApache(アパッチ)というソフトも無料である。さらにウェブページを構築するためのオープンソースソフトが大量に無料でインターネット上にはあふれている。多少の知識があればブログシステムやポータルサイトが10分ほどで構築できる。MixiのようなSNS(ソーシャルネットワークサービス)も同様にオープンソースソフトで構築することができる。このようなオープンソフトを活用して企業向けにシステムを開発する起業家がいま爆発的に増えている。
ブラウザーやメールソフトは実質無料になっているが、マイクロソフト以外にも、Firefox、Opera、など優秀なソフトが台頭している。マイクロソフトの牙城が崩されることを書いたのは私がマイクロソフトを好きだとか、嫌いだとかそういう次元の話ではない。
他にもある。AdobeのFlashとほぼ同等の機能でFlash動画を作れるソフトが、Suzuka、Palaflaといったソフトでこれらも無料で公開されている。画像編集ソフトではPhotoshopが8万円もする高価なソフトであることは知られているが、こちらも無料でPixia、GIMPといったソフトを活用すればPhotoshopの機能の5割くらいのことができる
書き忘れたが、オフィスソフトの代替品には他にもKingsoftなどの中国製ソフトもある。こちらは有料ではあるが、費用はざっとマイクロソフトの6分の1である。常にディスプレイ上でマイクロソフトのロゴを眺めていないと落ち着かないMS依存症の人がもしいるならば、あるいはお金が十分に余っているならば、6倍高い値段で旧世紀のソフトを買うことをオススメする。
繰返しになるが、私はマイクロソフトの株を空売りしているわけではない。これらは象徴的な出来事であるということが言いたいのだ。これまでの産業の大潮流をみてきて、一般の人々に何か影響を及ぼす事実があるとき、それは一つの時代の変化を表すものではなかっただろうか?50年前の日本で、学生がアルバイトで稼いだお金で飛行機に乗って海外旅行をするなんて誰が想像したであろうか。ショルダーバッグほどの大きさの携帯電話が登場した1990年に、その15年後には胸ポケットに入る100gの携帯に500万画素のカメラとウォークマンが入っているということを誰が想像したであろうか。
社会を大きく変革する事実は、小さな事象をつぶさに見れば発見できる。先に書いたホームページ制作起業家の例や、無料ソフトの台頭は我々に何を示唆してくれるのであろうか?ぜひ考えてみて欲しい。これは巨大資本・生産設備・単純労働といったボリューム集約産業の産業形態から、軽量でスマートな知識労働集約型の産業形態へと大きく変換する土台が世界規模で推し進められ、既に整い始めたことを意味している。

12月 13th, 2008 at 10:16 PM
素晴らしい。この世紀の大変革を短くまとめた良ソースですね。